いきなりですが、皆さまは動物はお好きですか?
私はめちゃくちゃ動物好きです。
種類問わず、哺乳類、爬虫類、両生類、鳥類、なんでも大好きです。
嫌いなのは人間だけです。
おっと、口が滑りました。
気を取り直して、ホントに可愛い動物たち。
伴侶動物の犬猫はたしかに可愛いのですが、私の中の至高は野生動物。
彼らは「動物」という枠でくくるより、壮大な自然の一部です。
生きる姿が一挙手一投足、美しく神々しい。
そして可愛い。
やっぱり可愛い。
もう何年も前から、野生動物たちが人里に降りてくるニュースをよく見かけます。
可愛いですよ。
可愛いのですが、
・市街地では人に危害をもたらす危険な存在。
・農村部では畑を荒らす邪魔な存在。
・山では木々を食べつくす困った存在。
だいたい厄介者扱いされる野生動物たちです。
一方で、
「山に食べるものが無くて仕方なく降りてきている。」
「もとはと言えば人間のせい。」
「彼らに罪はないから殺してはならない。」
という擁護意見も強くなっています。
さて。
野生動物たちは本当に仕方なく、危険を冒して人間の生活圏にやって来るのでしょうか。
今回はデータから私の見解を交えながらお話しします。
これを読んで、あなたの考えに変化は起きるでしょうか。
一般的な世論の検証
まず、ちらほら見かける意見を見てみましょう。
野生動物が減っている…は本当?
シカの個体数推移
野生動物の筆頭格とも言えるシカさん。
ピークの2014年255万頭から、
2020年は218万頭まで減少(-15%)しています。
次に、イノシシさんはどうでしょう。
イノシシの個体数推移
シカさんと同じように、近年は減少しています。
ピークは2010年の146万頭。
2020年は87万頭まで減少(-40%)です。
数は減っているのは政府の施策?
さて、このデータだけを見ると、
「やっぱ減ってる!動物を守らないと!」
と感じるかもしれませんね。
しかし両者が減り始めたのは2014年。
この時何があったかというと、
狩猟の制限緩和(むしろ推奨)が敷かれたのです。
「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」を改正し、管理に向けた新たな仕組み【指定管理鳥獣捕獲等事業や認定鳥獣捕獲等事業者に関する制度】の導入です。
この狩猟推奨には理由があります。
・シカやイノシシの増加
→1989年からシカ10倍、イノシシ8倍
・農業被害
→毎年約200億円
・猟師の高齢化
→60歳以上が1989年の約2倍
(現在は猟師の過半数が高齢者)
このままでは街中がシカやイノシシだらけになってしまい、共存なんてできません。
そのため、2023年を目標に現在の約半数まで減らす方針を固めました。
(目標:シカ160万頭、イノシシ50万頭)
それが先述の、指定管理鳥獣捕獲等事業や認定鳥獣捕獲等事業者に関する制度です。
生息数が増えるのは良いことでは?
たしかにそうです。
動物に囲まれて生活できたら最高です。
まぁ脳内お花畑の話ですが…。
さて、真面目にデータに向き合ってみましょう。
このデータは1989年からのものですね。
1989年以前は絶滅しそうだったのでは?
増えて回復しただけなのでは?
回復したのにまた減らすのか?
と思う人もいることでしょう。
では、時代を遡ってみましょう。
なんとなーく、動物が多かったのではないかと思う時代。
1800年。
江戸時代後期頃と比較してみます。
200年前との個体数比較
データ統合が泣きそうだったので、簡潔な表を作ってみました。
江戸時代は正式な数値はありませんが、
森林面積や人口比率、狩猟数から予想し、およそ200万頭という専門家の見解がいくつか見受けられました。
間違いなく現在より、山も自然も多い環境です。
さぞかし動物たちはたくさん生息しているのだろうと思いきや、現在と大差ない頭数です。
ちなみに1800年頃は、野生動物により、多くの農作物に被害が出ていました。
当時は蓄えなんてできないので、農作物被害は生死に直結します。
そのため「狩猟したら報奨金出すよ」という政策が打ち出されました。
今と同じですね。
そこで全国的にガッツリ狩りもしましたが、数年後にはまたたくさん増えるという、イタチごっこが続いたそうです。
草食動物が増え草木を食べつくすと、翌年は食べ物が減り、草食動物も減る。
草食動物が減ったから、肉食動物も減る。
一方、草木は外敵がいなくなったから増える。
そして翌年は、草食動物が増えて…の繰り返し。
これが生態系。
一定数以上に増減しないようになっています。
自然ってすごい。
1900年頃、激減
不自然になったのは、人間の介入が激しくなった1900年頃。
激減しています。
北海道の急速な開拓や、乱獲の影響が大きいようです。
先述の通り江戸時代でもガッツリ狩っていたとはいえ、銃器でドーン&バタリではありませんから、狩猟数はしれていたことでしょう。
1900年以降は狩猟目的の猟銃ですから、恐ろしいほどに効率的です。
1905年にオオカミが絶滅。
シカも絶滅危惧になりました。
生態系が乱れまくり。
これはヤバい。
1980年以降、激増
マジでヤバいので、戦後、狩猟禁止の政策を開始し、徐々に制約を強めていきました。
1980年からシカたちの生息数が一気に爆上がり。
しかしこの爆上がりも不自然です。
・オオカミがいなくなったこと。
・里山の人口が減りシカの生息域が増加したこと。
・人間を恐れにくくなったこと。
・銃所持者が減ったこと。
政策の実施だけで生息数が増加したわけではなく、複数の要因が合わさったためと考えます。
ところで気になるのは2つ目。
自然破壊が問題視されているのに、生息域が増加しているとはどういうことでしょう。
山の食べ物が無くて降りてきているとの意見も聞きますね。
次で説明します。
山の食べ物が足りなくて…は本当?
シカもイノシシも、山の中腹~麓の天然林に生息する生き物です。
開拓により人工林が拡大したことにより、たしかに奥地へ追いやられました。
しかし時を経て、人工林を管理する人口も減り、人里近くの耕作放棄地等が天然林に近い状態に育ってきました。
おまけに放置された柿や蜜柑等の実のなる樹木も多いので、動物たちにはパラダイスです。
食べ物が足りないのではなく、住むに適した環境が人里近くに整ってしまったと捉えるのが妥当でしょう。
人が管理するのか、管理せず自然に還元するのか、境界が曖昧な土地が増えたことで、動物と人間のエンカウントも増えました。
また、背面がいきなり山!な、新興住宅地もありますから、「境界…とは?」ですよね。
まとめ/私的見解
野生動物の頭数は、2014年より減っています。
しかし、生態系が保たれていた1800年頃と頭数に大差はありません。
むしろ現在の方が多い結果でした。
1980年以降に劇的に不自然に増加した野生動物たち。
政府は2032年を目標に、彼らを適正な頭数へ戻そうと狩猟を推進しています。
この狩猟は、人間が介入して生態系を乱した報いかもしれません。
また、
動物も人間もお互いが行き来する曖昧な地点があるから、エンカウントも起きます。
お互いが見慣れた存在になるからこそ、人間に慣れて行動範囲が徐々に広がります。
野生動物を受け入れる人の存在が、野生動物の人への危険信号を鈍くさせ、安易に街中へ出没する原因にもなります。
彼らは人間が怖い存在だと気付いていないのです。
そして決して山に食料がないわけではありません。
もし食料がないのであれば、それも自然の摂理として、自然に還るのが野生動物だと考えます。
人間が情けを加えることで、野生動物たちはより行動範囲と頭数が増えます。
そうすることで、計画的頭数削減で多くの野生動物たちを狩ることになるでしょう。
「情けは人の為ならず」と言いますが、それは動物に対しても当てはまる言葉です。
共存のためのアクション
野生動物を見かけたら…
・餌をあげない
・不用意に近づかない(無視する)
・助けない(交通事故など人為的に傷つけた場合は別)
人間の課題は…
・耕作放棄地を減らす
・林業、農業の補填(野生動物を寄せ付けないために)
・長期にわたる教育
動物が大好き。だからこそ。
冒頭の通り、私は動物が大好きです。
大好きだから、死にゆく様を見たくないのが本音。
しかし今、目の前に野生動物が街中に紛れ込んできたら?
この1頭を助けることで、今後1万頭の命が失われるのならば、あなたはどうしますか?
私の結論は、
好きだから狩る。辛いけど未来のために。
命について、賛否両論ある議題だとは思います。
正しい答えもありません。
だけど、この議題について常に考えて意識してくれる人が増えることが、自然や動物の保護に繋がるのは間違いありません。
共存に向けて引き続きサードリングは発信してまいります。
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